日本企業がキャプティブのドミサイルとしてハワイを選択する理由トップ10

ハワイキャプティブ保険協会(HCIC)が発表している「日本企業がキャプティブのドミサイルとしてハワイを選択する理由トップ10」を取り上げ、その内容を深掘りしていきます。

 

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。
11月19日と20日に、ハワイ州キャプティブ保険協会主催のセミナーが東京ステーションホテルで行われました。日本でもキャプティブ保険への注目度は年々高まっていますが、ハワイはキャプティブ設立地(ドミサイル)として特に注目を集めています。

前述の2つのセミナーは、既存のキャプティブオーナーと招待ゲストのみが参加することができるプライベートイベントです。毎年キャンセル待ちが出る人気イベントです。今年も2日間で延べ約200名にご参加いただきました。

今回は、本セミナーの主催者であるハワイキャプティブ保険協会(HCIC)が発表している「日本企業がキャプティブのドミサイルとしてハワイを選択する理由トップ10」を取り上げ、その内容を深掘りしていこうと思います。
以下が、HCICが発表した「日本企業がキャプティブのドミサイルとしてハワイを選択する理由トップ10」です。

 

  1. ハワイのキャプティブ保険業界には、知識と経験が豊富で日英バイリンガルの専門家達が各分野で従事している。

  2. ハワイ州保険局とキャプティブオーナーとの間に、協力的で迅速な対応が可能な関係が既に築かれている。

  3. 円建て資本金や運営資金の保有及び円建ての財務報告が可能であるので、日本親会社との諸表の連結が容易である。

  4. 海外の再保険及び投資市場を利用することが実現する。

  5. 日本・世界とビジネスを行う上でのハワイの地理的に便利な位置に加え、年間を通して安定した快適な気候であるため、出張時期が限定されない。

  6. ハワイの歴史的な日本との繋がりから日本文化に理解があり、全体的に親日感のある環境の中でビジネスを行うことができる。

  7. 法律及び規制が柔軟である。

  8. キャプティブ業界に特化した、安定的で世界的に評判の良い政府のインフラが存在する。

  9. ハワイは米国のドミサイルのため、日米租税条約のメリットを享受できる。

  10. 内部監査の要件がない。

Hawaii Captive Insurance Counsel 「日本企業がキャプティブのドミサイルとしてハワイを選択する理由トップ10」より
 

1.ハワイのキャプティブ保険業界には、知識と経験が豊富で日英バイリンガルの専門家達が各分野で従事している。

 

キャプティブ保険会社の運営は、多くのサービスプロバイダーに支えられています。銀行、弁護士、会計士、アクチュアリー(保険数理士)、投資顧問、リスクアドバイザー、そして弊社のようなキャプティブ保険マネジャーなどです。またキャプティブ保険会社の規制を行う保険局も、広義のサービスプロバイダーと言えるかもしれません。ハワイ州がキャプティブ保険法を立法してから30年の歴史あるドミサイルで、保険料規模で米国第2位の世界的なドミサイルです。

ハワイ州にはドミサイルの発展を支えてきた多くのキャプティブ保険専門家がおり、日本語が通じるサービスプロバイダーも数多く在籍しています。ハワイ州保険局でも、最近日英バイリンガルの専門スタッフを採用したそうです。世界的に見て、ハワイ州ほど充実した現地のインフラがあり、かつ日本語が通じるドミサイルは他にありません。ハワイ州が、キャプティブ保険会社の設立を検討している日本企業に注目されている大きな理由の一つです。
 

2.ハワイ州保険局とキャプティブオーナーとの間に、協力的で迅速な対応が可能な関係が既に築かれている。

 

日本企業がハワイに視察に来られて一番ビックリするのは、ハワイ州保険局のフレンドリーな対応です。このフレンドリーな対応は、設立後も続きます。ハワイ州の保険局は、日本だと金融庁保険課に当たるわけですが、ビジネスパートナーの様なフラットな関係を持つことができます。ドミサイルとしてのハワイ州を、キャプティブオーナーとサービスプロバイダーと共に盛り上げていきたい。保険局の基本姿勢には、そんな思いが良く反映されています。オーナー企業からの要望やニーズに最大限応えられるような柔軟な対応をしていただけます。
 

3.円建て資本金や運営資金の保有及び円建ての財務報告が可能であるので、日本親会社との諸表の連結が容易である。

 

日本のリスクを多く抱える企業にとって、外貨建ての保険会社を運営するというのは、管理面でも為替リスクの面でもあまり好まれないケースがあります。また企業によっては、ハワイ州のキャプティブが初の海外進出となるケースも多いと思います。こういった企業にとって、米ドル(外貨)で子会社を管理することに不安を抱く企業も多いと思います。ハワイ州では、こういったニーズにも柔軟に対応する体制が、保険局とサービスプロバイダー両者にすでに備わっています。

ハワイ州では、日本円での最低資本金設定や、日本円での財務報告を許可していて、またサービスプロバイダーも日本円での運営をサポートしています。海外子会社でありながら国内子会社のように日本円で管理できるのは、多くの日本企業にとって魅力的なメリットです。

 

4.海外の再保険及び投資市場を利用することが実現する。

 

キャプティブ保険会社のメリットに、海外の再保険会社からの再保険の調達があります。再保険を調達する際に、ドミサイルの信用力も重要になります。ハワイ州は世界的に見ても歴史と実績に裏打ちされた信用性の高いドミサイルです。米国内はもちろん、世界中の再保険会社から再保険を調達することができます。

またハワイ州のキャプティブは、ハワイ州および米国の金融機関から様々な投資を行うことができます。投資は、保険会社の本業です。世界一の金融市場を持つ米国で資産を運用できるメリットは非常に大きいのです。
 

5.日本・世界とビジネスを行う上でのハワイの地理的に便利な位置に加え、年間を通して安定した快適な気候であるため、出張時期が限定されない。

 

日本からキャプティブを管理する上で、ハワイは非常に利便性の高い位置にあります。日本とハワイの時差は19時間なので、火曜日から金曜日の午前中の就業時間がハワイの就業時間と重なっています。またホノルルには、日本の主要都市から直通便が毎日出ています。飛行時間は7-8時間です。移動時間としては、東京から新幹線で九州や北海道へ行くのと大差ありませんね。お勧めはしませんが、ホノルルは最短で1泊2日で往復することができるのです。

またハワイの気温は年間を通して20℃から31℃で安定していますので、出張先としても理想的な気候です。出張をされる際は、時差の調整日(ゴルフ日)を設けて、万全の態勢で現地業務に臨んでいただきたいです。出張先としてもハワイの魅力は大きいですね。
 

6.ハワイの歴史的な日本との繋がりから日本文化に理解があり、全体的に親日感のある環境の中でビジネスを行うことができる。

 

2018年は、ハワイ(米国)日系移民150周年でした。当時まだ独立国であったハワイに、日本から最初の移民船団が到着したのは1968年のことです。1968年は日本では明治元年ですので、当時移民した日系1世を元年者などと呼びます。ハワイの日系人口は、一時40%を占めていたこともあり、日本文化は今でもハワイの風習に大きな影響を与えています。正月には初詣をして餅をつき、夏には盆踊りをしているドミサイルは、他にないのではないでしょうか?

ハワイの保険局とサービスプロバイダーにも日系人が多く、日本企業の文化にも理解があります。またハワイ州保険協会は10年以上前から毎年日本でセミナーを開催するなど、日本へ大きな関心を寄せています。ハワイには、海外でありながら日本企業がなじみやすい風土があるのです。
 

7.法律及び規制が柔軟である。

 

ハワイ州でのキャプティブ保険会社の運営は、ハワイ州法に基づいて行われます。ハワイ州法の大きな特徴は、保険局長に十分な裁量が与えられていることです。最低資本金の設定などはその一例です。ハワイ州法に法定最低資本金が設定されているものの、最終的な最低資本金の設定は保険局長の裁量に任されています。保険局長は、プログラムごとに特有な条件を考慮して、ケースバイケースの判断をします。キャプティブ保険会社の規制の各方面で同じアプローチが取られており、柔軟な対応が取られています。これは同時に様々な場面で交渉が重要になることを意味しており、キャプティブマネジャーの腕の見せ所でもあります。

今ではハワイで当たり前となっている日本円でのキャプティブ運営は、過去に行われたキャプティブマネジャーの交渉と保険局による柔軟な対応の賜物なのです。
 

8.キャプティブ業界に特化した、安定的で世界的に評判の良い政府のインフラが存在する。

 

ハワイ州は、30年の歴史と200社を超えるキャプティブ数を誇る世界的なキャプティブ設立地(ドミサイル)です。ハワイ州のドミサイルとしての発展は、規制インフラを提供しているハワイ州保険局と州政府の強力なバックアップに支えられています。ハワイ州保険局には、キャプティブ保険に特化した専門部署が存在し、200社を超えるキャプティブ保険会社の規制作業にあたっています。多くのドミサイルでは、保険業一般を規制している担当局がキャプティブの規制を兼務しています。キャプティブ保険専門の規制部署を持っていることは、ハワイ州の大きな特徴となっています。また州政府と議会でも、キャプティブ保険の重要性をよく理解しており、安定したサポートを提供しています。
 

9.ハワイは米国のドミサイルのため、日米租税条約のメリットを享受できる。

 

ハワイ州は米国の州ですので、租税条約などは日米租税条約に依拠しています。日米租税条約では、日本と米国の間で行われる商取引に関わる租税ルールが明確に規定されています。キャプティブ保険の取引も例外ではありません。また日米間の租税条約のメリットだけではなく、米国内の保険会計や税法のメリットも存在しています。保険及びリスク管理の先進国である米国では、保険会社専用の会計基準や税法が古くから導入されていて、米国のキャプティブ保険会社もその恩恵を享受することができます。
 

10.内部監査の要件がない。

 

誤解の無いように先に言っておきますが、ハワイ以外のドミサイルに内部監査の要件が存在するという意味ではありません。単にハワイ州の規制として内部監査の要件を課していないという意味です。内部監査は、主に上場企業の監査要件として知られていますが、企業もしくは企業の監査委員会が判断して行うものです。ハワイ州の規制としては内部監査を要求していませんが、企業の要件として内部監査を強化したい場合、現地で運営に参画しているキャプティブマネジャーの協力は不可欠です。

ハワイ州では、過去にキャプティブマネジャーの要件にCPA(公認会計士)を入れていたこともあり、現在でも多くのキャプティブマネジャーが大手会計事務所に所属していた経験を持つ公認会計士です。私も上場企業の要件としてキャプティブ保険会社の内部統制の文書化作業などを担当したことがあります。ハワイのキャプティブマネジャーの多くは、企業の業務プロセスをよく理解しています。企業の要請があれば、内部統制の導入と運用に協力してくれるでしょう。


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