キャプティブ保険と税務(節税)に関する誤解を解きます。

キャプティブ保険を検討する時、税金のお話は避けて通れない大事なお話です。今回は、キャプティブ保険と税金、そして節税にまつわる誤解を解きます。

 

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。
キャプティブ保険を検討する時、税金のお話は避けて通れない大事なお話です。
しかし、日本企業にとって米国の税務は難解で、誤解が多い分野でもあります。
今回は、そんなキャプティブ保険と税金にまつわるお話です。

私は、米国(カリフォルニア州)の公認会計士で、米国の大手会計事務所でグローバル企業の監査と税務を経験し、現在はハワイ州保険局からキャプティブ保険マネジャーの認定を受けて日米双方のキャプティブ保険会社を管理しています。
過去に設立・管理に携わった日米のキャプティブ保険会社は30社以上です。
キャプティブ保険、米国の保険会計と税務、そして日米の国際税務の専門家として、多数の日本企業にアドバイスを提供しています。

キャプティブの税務は、設立する地域(ドミサイル)によって内容が異なります。
今回は特に、日本企業のドミサイルとして最も注目されているハワイ州での税務の誤解について解説をします。
こんな内容のお話をしていきます。

 

  • 誤解1:キャプティブ保険は節税の仕組みである

  • 誤解2:大企業がキャプティブで節税をしている

  • 誤解3:ハワイ州キャプティブの税率は0%

  • 誤解4:ハワイ州の税率は21%

  • 誤解5: 特定のドミサイルはタックスヘイブン対策税制の対象外

 

誤解1:キャプティブ保険は節税の仕組みである

 

キャプティブ保険会社に関する誤解で、最も残念なものは「キャプティブ保険は節税の仕組みである」というものです。
以前に「キャプティブ保険は節税なのか?」という記事でも解説したことがありますが、「キャプティブ保険は節税の仕組みである」というのは大きな誤解です。

日本では、少し前まで生命保険が全額損金の企業向けの節税アイテムとして売られていました。
日本企業が間接的にキャプティブ保険会社に払い込む保険料も、基本的に全額損金になるので同じような発想でキャプティブ保険に興味を持たれる方が非常に多いです。

そもそもキャプティブ保険の本来の目的は、リスク管理の手法として既存の保険プログラムを補完することにあります。
節税のみを目的としたキャプティブ活用は、米国と日本の税務当局が注目していますし、毎年のように規制が強化されています。
節税のみを目的としたキャプティブは、短期的にはその目的を達するように見えますが、長期的な視点でメリットが出るかどうかは疑問です。
「キャプティブで節税しませんか?」という提案には、くれぐれも気をつけてください。

 

誤解2:大企業もキャプティブで節税をしている

 

これは誤解1にもつながる話ですが、「大企業もキャプティブを活用して節税をしている」という話をよく聞きます。
キャプティブを新たに紹介する際に、すでに導入している大企業の名前を挙げるということはよく行われています。
確かにコカ・コーラ社やグーグル社といった世界に名だたる大企業がキャプティブを導入していると聞けば、価値のある提案に聞こえますよね?
キャプティブについて知らない方に導入している大企業の名前を出して安心感を与えること自体は、私も悪いことだとは思いません。
しかし、大企業が節税目的でキャプティブを活用しているというのは大きな誤解です。

私は、以前に米国の大企業のキャプティブの管理を担当したことがあります。
その活動内容は、一般の保険会社と比較しても遜色ないほどに高度で洗練された内容であり、それを実現できる組織とガバナンス体制が整備されていました。
大企業にとってのキャプティブは、グループ企業全体のリスク管理戦略の中心であり、財務戦略や場合によっては人事戦略をも支える重要な仕組みなのです。

もちろん何処にキャプティブを設立するかによって税制は変わってきますので、税務メリットは当然考慮されます。
しかし、リスク管理という本来の目的が税務メリットに振り回されることはありません。
米国の大企業によるキャプティブ活用は、非常に高度で洗練された取り組みです。
「タックスヘイブンにキャプティブを作って節税」といった、安易な発想が入る余地は無いのです。

 

誤解3:ハワイ州キャプティブの税率は0%

 

ハワイ州キャプティブの税務に関する誤解で一番多いのは、「ハワイ州キャプティブの税率は0%(無税)」というものではないでしょうか?
これは色々な意味で間違った認識ですが、話が込み入っているので誤解されるのもよくわかります。

先ず保険会社であるかどうかに関わらず、米国の企業は全て連邦政府の連邦税と各州政府の州税の対象となります。
ハワイ州キャプティブも、もちろん連邦税とハワイ州税の対象になります。
ハワイ州キャプティブの税務を理解するには、この二つの税を別けて理解することが重要です。

先ず連邦税ですが、一般的にキャプティブを含む保険会社には特殊な保険税制が適用されます。
保険税法は、課税所得の計算方法が一般企業と異なりますが、税率自体は一般企業と変わりありません。
一般企業と違いがあるとすれば、課税所得の計算方法からくる納税のタイミングの違いです。

ハワイ州税に関しては、ハワイ州キャプティブは優遇されています。
一般の事業会社が支払う州法人税や売上税が免除されている代わりに、保険料に対して最高20万ドルの保険料税が課されます。
ハワイ州の保険料税は0から0.25%の税率が段階的に適用されるうえ、最高税額が20万ドルで頭打ちになるので、保険会社にとっては税務メリットになります。
さらに、ハワイ州は再保険にたいする保険料税を免除しています。
日本企業のキャプティブは、国内のリスクのみを再保険として引受けることが多いので、結果的に多くの日系キャプティブはハワイ州税がすべて免除されることになります。

ハワイ州税が免除になったとしても、連邦税が課されているのであれば無税にはなりませんよね?
では、なぜハワイ州キャプティブが無税であるという誤解が存在するのでしょうか?


これは、内国歳入法831(b)条という連邦税の選択税制が誤解のもとになっています。
831(b)についての詳しい説明は割愛しますが、831(b)とは保険会社に対する連邦税の選択税制で、一定の要件を満たしている場合、投資収益のみが課税対象になります。
つまり保険収益が課税所得にカウントされないので、さらに投資収益が無い場合は連邦税の課税所得が無くなってしまいます。
831(b)は、あくまでも一定の条件下で連邦税の課税所得がゼロになる仕組みであって、税率がゼロになる仕組みではありません。

話をまとめると「ハワイ州のキャプティブは無税になる」という誤解は、「ハワイ州の再保険キャプティブにはハワイ州税がかからない」という話と、「831(b)の適用を選択し、かつ適用要件を全て満たしており、かつ投資収益が無い場合に限り連邦税の課税所得が発生しない特殊なケースがある」という話を、きちんと理解していないから起きているのです。
ハワイ州のキャプティブが全て無税になるという話ではありませんので、注意が必要です。

 

誤解4:ハワイ州の税率は21%

 

これは誤解3の説明でだいぶ話したので、皆さんもうお分かりがと思います。
「再保険のみを引受けているキャプティブにはハワイ州税がかからない」という話と、「ハワイ州のキャプティブには21%の連邦法人税(2020年1月現在)が課せられる」という話を、混同していることからくる誤解です。
再保険のみを前提とした日本企業キャプティブの実効税率は21%になるので実害の無い誤解ですが、正しく理解しておくことは大切です。

 

誤解5:特定のドミサイルはタックスヘイブン対策税制の対象外

 

海外で保険子会社を運営するキャプティブ保険プログラムにとって、外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン税制)は避けては通れない話題です。
タックスヘイブン税制にまつわる誤解で一番多いのは、「特定のドミサイルはタックスヘイブン対策税制の対象外になる」というものでしょうか?

タックスヘイブン税制は非常に難解な税制で、そのうえ毎年新しいルールや解釈が導入されています。
説明すると本が一冊書けてしまうので割愛しますが、とりあえず単純に設立国の税率をもとに適用の有無を判断できたのは、だいぶ昔の話です。
例えば日本企業に人気の高いハワイ州(米国)やミクロネシア連邦などは、ある時期までタックスヘイブン税制の適用はないというのが常識でした。

今は、各社固有の状況に照らして専門的な分析を行うことが求められています。
「ハワイだからタックスヘイブン税制の適用はない」などの安易な判断はできないので、注意が必要です。
キャプティブに対するタックスヘイブン税の適用の有無は、専門家のアドバイスを聞きながら各社それぞれの判断が必要になります。

 

まとめ

 

今回は、キャプティブの税務にまつわる誤解を解説しました。
込み入った話を最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回みなさんに覚えておいていただきたいのは、次の二つです。

先ず、何度も繰り返しますが、キャプティブは節税の手段ではありません。
リスク管理を目的に、健全なキャプティブ運営を心掛けてください。

そしてキャプティブの税務はあいまいな情報をもとに独自の判断するのではなく、専門家の分析をもとに、きちんと精査して対応してください。


 

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