2019年第4四半期のファクトシートが発表されました。

2019年度のハワイ州における日本企業キャプティブに関するトレンドを、解説します。

 

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。ハワイ州保険局は、四半期毎にハワイ州キャプティブに関するファクトシート(統計)とキャプティブのリストを発表しています。2019年第4四半期のファクトシートとキャプティブリストが発表されましたので、内容を確認していきたいと思います。

 

  1. 日本企業による設立が急増

  2. 大企業による設立

  3. 設立が増えた理由

  4. 今後も設立は増加する

 

1. 日本企業による設立が急増

 

2019年のハワイ州新設キャプティブは11社、うち8社が日本企業による設立でした。ハワイ州保険局によると、日本企業による設立が米国企業による設立を上回ったのは、2019年が初めてだそうです。日本企業による設立が、前年に引き続き増加傾向にあることがわかります。日本企業による設立で一番多かったのは製造業で、半数以上を占めています。他に不動産、小売業、IT関連企業による設立があったようです。

 

2. 大企業による設立

 

2019年のトレンドとして特筆するべきなのは、大手上場企業による設立が多かったことです。オリンパス、アイシン精機、パナソニックが、2019年に相次いでハワイにキャプティブを設立しました。昨年暮れのNTTによる設立に引き続き、大手企業によるキャプティブ設立の増加がさらに顕著になりました。

 

3. 設立が増えた理由

 

日本企業による設立が増えた要因はいくつか考えられます。先ずキャプティブ保険の認知が高まってきているということが考えられます。特に大手企業の中では、一般的なキャプティブ保険に対する理解が高まっているようです。以前からキャプティブを検討している企業の中で、キャプティブを中心とした新しいリスクマネジメント体制の整備を進めている企業も増えているようです。弊社が日本で企業に説明に行った時も、「キャプティブって何ですか?」というレベルから一歩踏み込んで、「弊社はキャプティブで何ができるのか?」という問題意識に変わってきていることを実感しています。

次に、昨今の台風や洪水などによる被害の拡大に伴って、国内の火災保険料が高騰傾向にあるということがあると思います。国内の火災保険の保険料率は、比較的低い水準で推移してきましたが、昨今の甚大な損害を受けて国内の保険会社が相次いで保険料の値上げを行っています。保険料の値上げは、損害の有無に関わらずほぼ一律で行われることが一般的です。損害を受けなかった企業が、今後考えられるさらなる保険料の値上げに備えて、キャプティブでヘッジしていることが考えられます。

最後に、外国子会社合算税制の明確化があります。長い間、キャプティブに関わるの税制は不明確部分が多く、税制に関する判断やそれに関わる設立地の選定を困難にしていました。ここ数年の間に新たな国際租税にかんする枠組みが導入されたことで、キャプティブの合算課税に関する問題点が、かなり明確になりました。
税務の不明点が解消されたことで、企業がキャプティブ設立の判断をしやすくなっていることが考えられます。

 

4. 今後も設立は増加する

 

昨年11月に、東京ステーションホテルでハワイ州キャプティブ保険協会(HCIC)主催セミナーが開催されました。そのセミナーの冒頭ハワイ州キャプティブ監督官のアンドリュー 倉田氏は、ハワイ州キャプティブ業界にとって日本企業が占める割合が年々高くなっていることを紹介し、今後もそのトレンドはしばらく続くだろうと発言されました。

ハワイ州保険局では日本語の話せる保険検査官を採用し、増加する日本企業キャプティブへのサービスインフラを強化しています。日本企業のキャプティブ運営におけるハワイ州の役割は、今後さらに重要になってくると思います。

 

参考:ハワイ州保険局 2019年12月31日付ファクトシートおよびキャプティブリスト

 


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