9月30日付ハワイ州キャプティブ保険業界の統計が発表されました。

2019年は、日系キャプティブの設立ラッシュです。ハワイ州保険局発行のファクトシートをもとに解説します。

 

こんにちは、ハワイ州キャプティブ保険マネジャーの三澤です。
ハワイ州保険局が、9月30日付のファクトシート(統計)を発表しました。
今回は、こんな内容のお話をしていきます。

 

  1. 2019年9月30日時点でのハワイ州キャプティブ数

  2. 2019年は日本企業キャプティブの設立ラッシュです。

  3. 日本企業の設立が増加傾向にある理由

  4. 今後も設立は増加する見込みです。

 

2019年9月30日時点でのハワイ州キャプティブ数

 

では早速内容を確認していきましょう。
2019年の第3四半期は新規の設立が3件あり、ハワイ州のキャプティブ数が235社となりました。
2019年に入ってすでに9社が設立したことになります。

ハワイ州キャプティブの年間設立数は、平均約12社です。
四半期の平均でみると例年並みの設立ペースであると言えますが、キャプティブの設立は年末に向かって増える傾向があるので、もしかしたら例年より早いペースかもしれません。

 

2019年は日本企業キャプティブの設立ラッシュです。

 

では次に日本企業キャプティブの設立状況を確認してみましょう。
2019年の第3四半期は新規の設立が3件ありましたが、この3件は全て日本企業による設立でした。
よってハワイの日系キャプティブ保険会社の数は44社になりました。
中でも特筆すべきなのは、3社の新規設立のうち2社が大手上場企業による設立であったということです。

2019年を通して見てみると、設立された9社のうち、7社が日本企業による設立です。
ハワイ州の新規キャプティブ設立を、日本企業が牽引しているといってもよい状況です。
これは2019年に限った話ではなく、ここ10年のトレンドです。

日系の新規設立が米国企業による設立を上回ったことで、よりその傾向が顕著になったと言えます。

 

日本企業の設立が増加傾向にある理由

 

2019年の日本企業キャプティブの設立増加には、二つ理由があると思います。

一つは、2018年に導入された米国の新税制(いわゆるトランプ税制)の影響。
もう一つは、来年4月から日本で導入される予定の外国子会社合算税制(いわゆるタックスヘイブン税制)の影響です。

トランプ税制は2017年12月に法律となり、2018年1月1日から導入されました。
しかし年末に急に決まって、翌年の1月1日からの導入となったため、米国内はもとより日本でもその影響を測りかねていたというのが2018年上半期の傾向でした。

トランプ税制の影響が整理され、米国の税務メリットの優位性が確実になった2018年後半から設立作業に入ったキャプティブが、2019年に入って運営を開始したのではないかな、というのが私の個人的な意見です。

そしてもう一つ、2018年は日本の国内でもいわゆるタックスヘイブン税制の明確化が進みました。
細かい話はここでは割愛しますが、今までグレーゾーンだったものがある程度白黒はっきりしたというのが、2018年のトレンドでした。
税務のルールが明確化したことで、日本企業がキャプティブ設立の判断をし易くなったというのが、もう一つの大きな理由だと思います。

2019年の新規設立で、私の知る限り税務メリットを前面に押し出した案件はありませでした。
税務のルールが整備されて、キャプティブ保険本来のメリットがフォーカスされているのだと思います。
これは歓迎すべき傾向だと思います。

こういった税務ルールの明確化と、キャプティブそのものの認知度アップが、大手上場企業を含む日本企業による設立に繋がっているのだと思います。

 

今後も日本企業によるキャプティブ設立は、増加する見込みです。

 

確認してはいませんが、日本企業による新規キャプティブの設立数が、米国のキャプティブを大きく上回っている今年の傾向は、初めてのことかもしれません。
私は、今後もこの傾向は続いていくと考えます。

米国のキャプティブ保険マーケットは成熟していますが、逆に言えば飽和状態であるともいえます。
欧米企業でキャプティブを持つべき企業は、すでにキャプティブを設立したか、検討したうえで設立していないケースが多いのだと思います。
また、米国企業にとってのキャプティブ設立地(ドミサイル)は、ハワイだけではありません。
バミューダなどのオフショアに加え、国内にも30近いドミサイルがあります。

一方、日本企業のキャプティブ保険マーケットは、やっと認知度が上がり始めたとはいえ導入に至っている企業はまだまだごく一部です。
またドミサイルの選択肢も、地理的な条件などを考えると現実的な選択肢はハワイ州、ミクロネシア連邦、ラブアン(マレーシア)などごく少数に限られてしまいます。

今後、国内のキャプティブ保険の認知度が上がり、ニーズが顕在化していくにつれ、ハワイ州での日本企業によるキャプティブ保険会社の設立件数も確実に増加していくと思います。

12月末のファクトシートも、お楽しみに。


 

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